Message from ecoislandエコアイランド通信
環境省が実施しているジュゴン意見交換会&喰み跡モニタリング調査に同行しました!
現在、環境省が実施している「令和7年度ジュゴンと地域社会との共生推進委託業務」の一環として、ジュゴンと地域社会の共生に向けた取組を推進してしています!
エコアイランド宮古島広報誌【島の色】 12号内でジュゴン保全活動の取り組みを紹介した記事をご覧頂いた方も多いかと思います!
ジュゴンは国内では個体数が非常に少なく、環境省レッドリストで絶滅危惧種と評価されてい
る動物ですが、その行動範囲が漁業や船舶航行など人の活動域と重なり、混獲や衝突等が生じるおそれがあることから、地域の皆様にジュゴンに関する理解を深めていただき、ジュゴンと地域社会との共生を目指すことが重要です。
伊良部島では、これまで多くのジュゴンの目撃情報が寄せられ、喰み跡も多く確認されている
ことから、令和6年度より漁業者によるジュゴンの喰み跡モニタリング調査を開始し、今年度も開催!
伊良部島佐和田地区の漁業者が中心となり絶滅危惧種ジュゴンの保全に関する意見交換会と喰み跡(摂餌痕)モニタリング調査が行われ、私たちも参加してきました!
沖縄周辺に生息するジュゴンの保全に向け、環境省と島の漁業者が連携して取り組む研究調査活動の一環です。
午前の部の意見交換会では、最新の調査結果の報告に加え、海草類を主食とするジュゴンの生息地である藻場の保全の重要性や、宮古諸島での目撃情報などについての議論が交わされました。
研究者より、「地元漁業者や市民の目で日常的に確認できる情報は、研究者だけでは得られない貴重なデータになる」との意見が出され、地域連携の重要性が改めて確認されました。
また、ジュゴンの存在を裏付ける環境分析(海で排泄された糞に含まれるDNAの分析)や喰み跡の分布調査から、より正確な生息状況の把握が可能であることも共有されました。
ジュゴンは近年、石垣島名蔵湾、西表島、波照間島、宮古諸島、奄美大島、久米島などでも個体もしくは喰み跡などが確認されており、沖縄本島以外での目撃例が増加しているそうなんです!
一般社団法人沖縄県環境科学センター理事の小澤さんからは、フィリピンから沖縄方面への黒潮の流れがジュゴンの個体群の維持に関係している可能性を示す仮説も提示されました。


そして、午後からは実際に潜水によるジュゴンの喰み跡の調査に出航しました!
以前からジュゴンの喰み跡が継続的に確認されている、定期調査を行っている藻場へ移動します。


調査では、通常ドローン映像や衛星画像と潜水調査を合わせて実施し、広大な藻場の状況を把握しています。
スノーケリングによる喰み跡のモニタリング調査の方法は、調査船を中心とした50m✕50mの範囲を4分割し、調査ダイバーがそれぞれの担当範囲で喰み跡の数や形を記録します。

記録の方法は、喰み跡の数や形、海草の種類などを地点毎にまとめます。


ジュゴンは約300kgの体重を維持するため、海草の草の部分だけでなく、地下茎(根状茎)を掘り起こして食べることで、線状の独特な痕跡が藻場に残ります。
下の写真が、モニタリング調査日に実際に確認されたジュゴンの喰み跡です。
ところどころ海草が根こそぎ無くなり砂地が露出しているのがわかるでしょうか?
これはジュゴンが集中的にこの辺りの海草を食べた形跡なのです。
喰み跡が線状にしっかりと確認できるところもありますね。


伊良部島沖の毎年の調査結果との比較により、漁業者や研究者からは「海草藻場の減少などの環境変化を実感している」との声も上がりました。
海草藻場の保全は、ジュゴンの餌場だけでなく、CO2貯留(ブルーカーボン)や、アカジンやマクブなどの水産重要種の保育場など、多面的な価値を持っています。
観光や開発との両立をどう図るか、地元主体の議論が今後の保全に欠かせないと感じました。
伊良部島佐和田地区でのこの取り組みは、海と共に生きる地域が主体となり、世界的にも希少なジュゴンの未来を守る実践例となります。
千年先の未来にもジュゴンが泳ぐ美しい海を守っていけるよう、地元漁業者と研究者が力を合わせ、南西諸島の豊かな海を次世代へ!!