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持続性だけでは足りない??再生型の観光とは
エコアイランド通信をご覧のみなさんは「リジェネラティブツーリズム」という言葉を聞いたことがありますか?
この言葉は観光地を訪れることで、その場所が訪問前よりも良くなることを目指す新しい観光の形です。従来のサステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)は、観光が地域に与える悪影響を最小限にすることを目標としているのに対し、リジェネラティブ・ツーリズムは、観光が単なる「消費活動」ではなく、「地域や自然に貢献する」活動となることを目指し、訪れる場所の環境や地域社会を積極的に再生し、改善することを目的としています。
リジェネラティブ・ツーリズムが注目される背景には、近年の気候変動や環境問題の深刻化、そして地域社会の持続的な発展を求める声が高まっていることがあります。
観光業界では、特に新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けたことを機に、持続可能な観光の在り方が見直されるようになりました。その結果、地域や環境にポジティブな影響を与えるための新たな取り組みとしてリジェネラティブ・ツーリズムが注目されるようになったのです!
2020年には、いくつかの国際的な団体が「観光の未来のための連合」を設立し、地域社会の再生を目指すための13の原則を策定しました。こうした活動の中で、リジェネラティブ・ツーリズムは、「訪れることでその場所をより良くする」という考え方を推進しています。
実際の取り組み実例
具体的な事例として、サウジアラビアの「コーラル・ブルーム・プロジェクト」があります。このプロジェクトでは、シュライラ島周辺の海洋生態系を再生するために、2030年までに新しいリゾート地を開発する計画が進められています。島の自然環境を強化し、サンゴ礁やマングローブの生息地を創出することで、地域の生態系を保護しながら観光地としての魅力を高めています。
また、メキシコのPlaya Vivaというリゾート地では、地域住民と協力しながら持続可能な開発を進めています。ここでは、環境に配慮した建築物の設計や再生可能エネルギーの使用、地元の素材を活用した建築などが実践されています。さらに、滞在費の一部が地域の発展に使われるリジェネラティブ基金として投資される仕組みもあり、訪れることで地域がより豊かになることを目指しています。
まだ歴史は浅いものの、各国でこういった取り組みが実際に行われています。
旅行者が果たす役割とは?
リジェネラティブ・ツーリズムの最大の特徴は、旅行者がただの「観光客」ではなく、「地域の再生に貢献する参加者」としての役割を果たすことです。
観光客が訪れるだけでなく、現地での環境保全活動や社会的プロジェクトに積極的に参加することが求められます。例えば、地域の環境保全活動にボランティアとして参加したり、地元の文化を学び支援するプログラムに参加することで、訪問先の環境やコミュニティを改善することが期待されています。
こうした取り組みは、地域の環境保全や経済の活性化に直接つながるだけでなく、旅行者にとっても非常に意義深い体験となります。観光地をただ楽しむだけでなく、その場所をより良くするための活動に参加することで、旅行の価値がさらに高まるのです。
日本での可能性と事例
日本でも、リジェネラティブ・ツーリズムの導入が期待されています。特に、沖縄や北海道などの自然や文化が豊かな地域では、この考え方が徐々に広がっています。沖縄では、サンゴ礁の保全活動や地域の伝統文化の保存に積極的に取り組んでおり、観光客と地元の人々が一緒になって持続可能な未来を築くための努力が進められています。
例えば、沖縄の一部の地域では、観光客がサンゴ礁の再生プロジェクトにボランティアとして参加できるプログラムが導入されています。これにより、観光客は単に「見る」だけでなく、地域の環境保全活動に直接貢献することができます。観光を通じて環境保全の重要性を学びながら、実際に地域のために貢献することができる仕組みが整えられています。
リジェネラティブ・ツーリズムの未来と課題
リジェネラティブ・ツーリズムは、観光の在り方を根本から見直す動きとして、今後さらに注目を集めることが期待されています。しかし、その実現にはいくつかの課題もあります。まず、地域住民の理解と協力が不可欠です。観光によって地域が再生するためには、地元の人々がその価値を理解し、積極的に参加することが必要です。
また、観光業者や地方自治体、NPOなど多様な主体が連携し、持続的な取り組みを続けることも重要です。観光収益が地域に還元される仕組みを作ることや、環境保全活動への参加を促すための教育プログラムを提供することが求められます。
さらに、リジェネラティブ・ツーリズムの効果を測定し、改善するための指標やベンチマークの開発も不可欠です。リジェネラティブな活動が実際にどれだけのポジティブな影響をもたらしているのかを把握し、継続的に改善していくためには、データの収集と分析が必要です。たとえば、旅行の影響を数値で示すことで、より多くの人々や企業がリジェネラティブ・ツーリズムに参加する可能性があります。
持続可能な未来を築くための新しい観光の形
リジェネラティブ・ツーリズムは、観光地の自然環境や社会を再生し、持続可能な未来を築くための重要な手段です。観光客と地域社会が共に成長し、訪れるたびにその場所がより良い方向へ向かうことを目指しています。これは、観光が単なる「楽しみ」だけでなく、「地域の未来に貢献する」ものへと進化することを示しています。
次の宮古島への旅行計画を立てるとき、みなさんも「再生型観光」に参加し、その土地の未来に貢献してみませんか?訪れる場所がより良くなるために、自分が何をできるのかを考える旅に出ることが、新しい観光のあり方になるかもしれません!