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宮古島市景観シンポジウムが開催されました
みんなで創る「結いの島」、宮古(みゃ〜く)〜これからの景観まちづくり〜
宮古島の青い海、豊かな自然、人々の暮らしが織りなす風景は、私たちの誇りであり、次の世代へとつないでいきたい大切な宝物です。
この風景を守り育てていくために、宮古島市は平成23年に「宮古島市景観計画」を策定し、「心かよう夢と希望に満ちた島宮古(みゃ~く)〜みんなで創る結いの島〜」という理念のもと、景観を大切にしたまちづくりを進めています🏝️✨️
その歩みをさらに深める場として、令和7年10月29日、「宮古島市景観シンポジウム」が開催されました!
第1部では、琉球大学 島嶼地域科学研究所服所長・教授の波多野想さんによる基調講演、
第2部では、宮古島市長嘉数氏含むパネリストが登壇し、宮古島の景観について有意義な議論が繰り広げられました。
今回の特集では、このシンポジウムの議論から見えてきた“これからの景観まちづくり”について紹介していきます。

景観計画を見直す理由とは?
宮古島市の景観計画では、島らしい風景を守るため、建物の高さや配置などに一定の基準が設けられています。
たとえば、池間島や来間島などの地域では、周囲との調和を大切にするため、建物の高さをおおむね2階建て(7m程度)に抑えるよう定めています。
しかし、伊良部大橋の開通や下地島空港の開業により観光地としての注目が高まる中、景観計画に基づく届け出件数が県内で2番目になるほど増加しており、「開発が周辺環境との調和を欠くケース」や「リゾート施設が増えて風景が住民から遠ざかってしまう懸念」があると懸念が示されていました。
こうした状況を受け、市では令和3年に景観計画を改定し、「自然景観の保全と活用」「市民主体のまちづくり」などを新たに掲げました。さらに、令和6年には建物の高さ制限をめぐる議論もあり、今後の見直しに向けた検討が始まっています。
今回のシンポジウムは、そうした取り組みの一環として開催されたものです。
“景観”とは何か
本シンポジウムでは、「そもそも景観とは何か」という根本的なテーマが話し合われました。
<専門家の視点>
琉球大学・波多野 想教授は、「景観」は単なる“目に見える景色”ではなく、建物や自然といった形あるものに加え、その土地の歴史や風土、人々の思い出や信仰といった“非物質的な要素”も重なり合って生まれるものであり、これを「文化景観」として捉えています。
つまり、地域を見ることはそこに暮らす“人”を見ることでもあり、人々の営みがあってこそ景観は成立するという考え方です。
また、波多野教授は「地域性を“らしさ”として簡単に限定し、“分かりやすさ”だけを追求すると、世代や個人がもつ記憶や思い出がこぼれ落ちてしまう危険性がある」と指摘。
宮古島の景観を考えるうえでは、ひとつの正解に絞るのではなく、「多様性+多元性」を受け入れていく方向が重要だと提言しています。
さらに、琉球大学名誉教授の池田 孝之教授は、沖縄全体がもつ“多様性”を強調し、「沖縄らしさ」を一言で限定することはできないと述べました。
景観を成り立たせる三つの要素として「自然」「歴史」「そこに住む人々の暮らし」を示し、景観は人の記憶や思いが載る「舞台」であると強調しました。
つまり、景観には目に見えない、“人の記憶”や“感情”も息づいているのですね!!

<行政・事業者の視点>
宮古島市の嘉数 登市長は、宮古島らしさとして「平らな島に濃い緑と黄色い緑のコントラスト、そして地平線・水平線が広がる開放的な景観」を挙げました。
また、ホテル「ホテル百名伽藍」の渕辺 美紀さんは、島に降り立った瞬間の“解放感”が宮古島の大きな魅力であり、平坦な島だからこそ奥まで見渡せる広がりが“心を安らげてくれる”と語りました。


市民の役割:「自分ごと」としての景観づくり
波多野教授は、景観は行政が一方的に整備するものではなく、地域住民自らが主体的に整備し、育てていく“自分ごと”であると主張しました。
嘉数市長も、景観を良くするためには「環境意識の低さ」「ごみ問題」など市民側の“弱み”に気づき、市民自らが変わることが欠かせないと強調しました。
景観を守るのは行政だけの仕事ではありません。
住民一人ひとりが「自分の暮らしの延長線上にあるもの」として関わることが大切です。
琉球大学では、市民の「記憶」を集めて景観との関わりを考えるワークショップも実施しており、参加者が自分の暮らしと風景を重ねて考えることで、景観への愛着が育まれたそうです。
「景観をつくる」から「景観を育てる」へ―
その意識の変化が、持続可能なまちづくりの第一歩です。
経済発展と景観の調和:量から質への転換
池田名誉教授は、景観法誕生の背景には「観光振興」があり、景観と経済は対立するものではなく、むしろ「景観を良くすること」が観光の振興につながるという原点を理解すべきだと語りました。
波多野教授も、景観は経済にとって重要な“資源”であり、良好な景観の維持・形成こそが持続可能な経済を担保すると同意しました。
ホテル百名伽藍の渕辺さんは、
復帰後、観光客数は18倍、観光収入は25倍になったにもかかわらず、住民所得がほとんど変わっていないという現状があるため、市民への還元を重視する「質の経済」への転換が不可欠だと述べました。
質を高める具体的な手法として、「地域との融合」「地元資材(琉球石灰岩など)の使用」「開発を行うならば緑を増やす」といった方針を紹介しました。
嘉数市長は、宮古島には物質的・心情的な“キャパシティ(許容量)”があると述べ、持続可能な島づくりのためにはこの許容量を超えない範囲での開発が不可欠という認識を示しました。市は現在、市民と意見交換を重ね、このキャパシティをもとに観光振興ビジョンを策定し、「量」から「質」へと観点を転換したいとしています。
最後の「質問コーナー」では、夜の景観、特に星空保護についても議論がありました。
渕辺さんは、夜間に“ライトダウン”を行うことで、満月の「月の道」など自然の夜景が大きな魅力となると提案。「新しいホテルの開発や企業の夜間の照明低減を条件とすべき」という意見も出されました。
嘉数市長も、人工的な光(光害)は、ウミガメの産卵など生態系にも影響を与えるため、夜間景観保護と生態系の維持は、新たな観光資源の側面も含めて両立させるべきだと語りました。
市内近くの夜間は閉店している場所でも、必要以上の明るさの照明が点いている場所を見かけます。
海だけではなく、広い空も宮古島の自然遺産という認識を高めていくことも大切ですね✨️

これからの景観まちづくりに向けた提言とメッセージ
<池田名誉教授より:モデルづくりによる波及>
池田名誉教授は、「島全体を一律に変えようとするのではなく、“モデル地区”を先行してつくることが有効」だと述べました。地域住民の合意形成(景観協定や景観地区指定など)を活用し、まずは成功の実例を創ること。その波及を通じて、経済効果も地域内に広がっていくと示唆しています。
<波多野教授より:継続的な“世話”の意識>
波多野教授は、景観を里山や竹林と同様に捉え、「人の手が入り、適切に“世話”することで初めて価値が守られる」と強調しました。行政が管理しやすい景観ではなく、地域住民が第一に関わる、多様で多元的な島づくりのために、小さなこと(例えばベランダの工夫など)から景観に気づき、参加できる環境を対話を通じてつくることが重要だと述べています。
<嘉数市長より:弱みの克服>
嘉数市長は、宮古島には多くの強み(温情、伝統文化、自然景観、食文化など)がある一方で、弱み(環境意識の低さ、ごみ問題)もあるとし、市民自身がその弱みに気づき、克服していくことが「量から質への転換」において大きな成果になると語りました。
これは行政だけでなく、島の全ての人が取り組むべき姿勢です。
<渕辺氏より:三方よしのバランス>
渕辺氏は、景観まちづくりは、市民の「誇り」を守ることであり、単に今だけでなく、次の世代も含めて誇れる将来をどう描くかが大切だと述べました。観光客、市民、事業者の「三方よし」のバランスを取ること、それが環境と観光の両立につながると強調しています。
「結いの心」でつなぐ、これからの宮古島
これからの景観まちづくりのカギは、市民の当事者意識と“結い(協働)”の力です。
- 多様性を受けとめること
島のあちこちにある“らしさ”を一つにまとめるのではなく、それぞれの地域の記憶や営みを活かしていく。
- 小さな成功から広げていくこと
まずは地域ごとに話し合い、景観協定などでモデル地区をつくることで、次の地域へと良い事例が広がっていく。
- 日々の「世話」を続けること
景観は一度整えて終わりではなく、草刈りや清掃、庭先の工夫など、暮らしの中で手をかけていくことで保たれていきます。
景観まちづくりは、行政や事業者だけでなく、住民や観光客も一緒に進める「みんなのプロジェクト」です。
宮古島市は、これからも市民とともに意見を交わしながら、“結いの島”の精神で、美しい景観を未来へと受け継いでいきます。