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ミヤコカナヘビの保全活動の実態と私たちにできること
宮古島市総合博物館にて宮古にしかいない生き物「固有種」をテーマにした「ズミ!宮古の生き物展」を開催。9月23日には、ミヤコカナヘビ保全の取り組みについて講演会が開催され、参加してまいりました!

講師は、円山動物園でミヤコカナヘビ管理責任者を務める本田直也さんです。
ミヤコカナヘビは、1996年に新種として発表された宮古諸島の固有種ですが、生息環境の悪化によってその数が急激に減少し、絶滅が危惧されています。この現状を受け、2017年度から環境省と日本動物園水族館協会の協力のもと、円山動物園での飼育と保護増殖事業がスタートしました。
本田直也さんの講演では、この保護増殖事業の進捗や課題についても詳しく説明をされました。それでは講演内容をご紹介しましょう♪
主な絶滅の原因としては、開発による生息地の減少や、イタチやインドクジャク、野猫といった外来生物による捕食が挙げられます。さらに、農薬や除草剤の使用による生息地への悪影響も問題視されています。また、ペット用としての乱獲が行われてきた歴史があり、これらの要因が重なってミヤコカナヘビは深刻な危機に直面しているのです。

講演では、「保護」と「保全」という用語の違いについても説明がありました。
「保全」とは、人間が自然を利用しながらも管理し、自然環境を守っていくことを指します。対して「保護」は、自然をそのままの状態で尊重し、人間が介入せずに守っていくことです。
ミヤコカナヘビの保護活動においては、これらのバランスが重要であり、人間の活動と自然の共存を目指した取り組みが進められています。
また、ミヤコカナヘビの繁殖に関する知見も共有されました。円山動物園では、温度が30℃を超えると産卵数が増える一方、23℃以下になると産卵がほぼ停止するなど、温度との関係が深いことがわかっています。また、同じペアでの繁殖率が2年目になると大幅に低下することも確認されています。
しかし、飼育下での繁殖には課題があり、サイズや体色などの表現型に変化が見られることや、行動面での問題が指摘されています。上野動物園と京都大学との共同研究により、これらの問題に取り組んでいますが、まだ多くの部分が未解明だそうです。
野生復帰に向けた取り組みも進められており、伊良部島の個体を使った繁殖や、野生個体の復帰に向けた準備が進行中です。野生生物生息域外保全センターとの連携により、飼育技術の向上が図られている一方で、限られた条件下での成果に過ぎず、自然界での適応に向けたさらなる研究が必要とされています。
また、病気に関する知見も北海道大学獣医学部と協力して集められていますが、まだまだ課題が山積しています。

私たちはこの貴重なミヤコカナヘビが安心して暮らせる環境を守るために、自然に配慮した行動を心がけていくことが大切です。例えば、自然の中を散策する際には、指定された道を使うことで生息地を踏み荒らさないようにしたり、外来生物を島に持ち込まないよう注意することが求められます。
また、野生動物に影響を与える可能性のある行動も控えることが大切です。さらに農業に従事している方々も、農薬や除草剤の使用をできるだけ減らす取り組みも生息地の保護に貢献できるとされています。
そして、何よりもミヤコカナヘビや宮古島全体の生物多様性に対する理解を深めることが、保護活動を支える大切な一歩になるのです。地元住民や観光客がそれぞれの立場から自然を大切にする意識を持つことで、島の豊かな生態系を守り、未来へと繋いでいくことができるでしょう。
啓発活動やボランティアに参加することで、私たち一人ひとりが自然保護の一翼を担うことができ、ミヤコカナヘビの保護活動にも直接的に貢献できるのです。
こうした小さな取り組みが積み重なり、宮古島の自然がこれからも豊かに息づいていくことを願いたいですね!