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2024.10.23
特集記事

地下水と、農業の未来

農業にとって水は命。「水が自由に使えること」それは宮古島の農家の夢であり、地下ダムの完成と共に、島の農業は新しい時代を迎えました。

島の農業の発展を支える地下ダム。地下ダムは、宮古島の独自の地形と水資源の特性を生かして構築され、島内の農業にとって欠かせない存在となっています。

今回は内閣府沖縄総合事務局、宮古伊良部農業水利事業所の方々にお話をお伺いし、実際に宮古吐水槽の見学にも行かせていただきました!

吐水槽内の地下水。

地下ダムの水がもたらす多様性のある農業。そもそも地下ダムとは一体・・・?

地中に水を通さない壁(止水壁)をつくって、地下水の流れをせきとめ、地下水をためる施設のこととされています。特徴としては下記5つになります。

・水没地がない

・ダムの決壊がなく安全

・ダム完成後も従前と同じ土地利用が可能

・貯めた水が蒸発しにくい。

・水温が安定している

宮古島は河川や湖がほとんどなく、生活用水の多くを地下水に頼っています。降水量は日本各地と比べて多く降るものの、その半分は蒸発し、地表を流れる水はわずか約10%程度!しかないため、川と呼べるようなものはほぼ存在しません。

また、宮古島の台地は石灰岩からなっており、こういった雨水の約40%は地下に浸透し、隙間の多い琉球石灰岩を通って流れ、島尻層群で止められた後、海へと湧き出しています。

この独特な環境を背景に、「地下ダム」が重要な役割を果たしており、地下に貯めた水を農業用水として活用する仕組みです。

地下ダムの工事では、地面を掘った後、琉球石灰岩とセメントなどを地下で混合・攪拌し築造していきます。場合によっては想定よりも琉球石灰岩が硬く、掘削や破砕に時間がかかるため、工期が延びるなどの課題に対しては柔軟な対応が必要なのだそうです。

でも、地下ダムによる安定した水供給は、宮古島の農業にとって欠かせないインフラ。

宮古島ではかつて干ばつに悩まされていたものの、国営の土地改良事業により灌漑(かんがい)施設や地下ダムが整備され、水不足が解消されました。これにより、農業生産が大きく改善されました。

さらに、宮古島から周辺の島々へ農業用水を送る計画が進められ、来間大橋や伊良部大橋の建設に際して、橋に送水管が組み込まれました。これにより、来間島や伊良部島の農地へ安定した水が供給され、農業の発展に寄与しています。

一方で、伊良部島では依然として十分な水が確保できておらず、降雨に依存した農業が続いています。この問題を解決するため、宮古島には仲原地下ダムと保良地下ダムが新設され、伊良部島には仲地副貯水池が整備される計画が進行中です。また、揚水機や用水路などの灌漑施設の整備も進められており、農業生産性のさらなる向上が期待されています!

島の主力作物であるサトウキビは、長年にわたり地域経済を支えてきました。地下ダムは、サトウキビ栽培に必要な水を安定的に供給し、高い収穫量を維持するための重要な役割を果たしています。


近年では、サトウキビだけではなく、マンゴーなどの高収益な果物に加え、野菜栽培にも挑戦する動きが広がっています。これらの作物は、市場の需要が高く、農家にとっても利益率の高いものになっています。特に宮古島のマンゴーは、その品質の高さから全国的に注目されており、観光客や贈答品としても人気を集めているのはみなさんもご存じのとおり。

地下ダムの水供給は、果物や様々な作物の栽培を支える基盤となり、宮古島の農業の新たな発展を促進しているのです。

これらの活動を通して宮古伊良部農業水利事業所の北村さんは「宮古島の農家の方々には、サトウキビのみならず、マンゴーなど高収益な作物にもぜひ挑戦してほしい」と熱く語ります。

多様な農業の展開は、宮古島全体の経済を活性化させ、農業者の収入向上にもつながります。地下ダムによる安定した水供給はその成長を支え、地域の持続可能な発展を促すでしょう。宮古島の地下ダムは、地域農業の発展を支える重要な基盤であり、多様な作物の栽培を可能にしています。

地域の農業がさらなる発展を遂げるためには、地下ダムを活用した水資源の管理とともに地域の農業を支援し、持続可能な未来を共に築いていくことが求められていくでしょう。