千年先の、未来へ。

エコアイランド宮古島公式サイト

follow us
Instagram facebook

Message from ecoislandエコアイランド通信

2022.09.18
特集記事

島の心、未来へつなぐ「しまくとぅば」

※上記写真は、しまくとぅばを楽しく学ぶことができる「しまくとぅばナビ」サイトより引用(https://shimakutuba.jp/

 

本日9月18日は「しまくとぅばの日」!

しまくとぅば(※)は、地域の伝統行事などでも使われる大切な言葉であるとともに、沖縄文化であり、私たちのアイデンティティのよりどころでもあります。

そんなしまくとぅばを普及継承していくため、沖縄県では、平成18年より毎年9月18日を「しまくとぅばの日」とする条例が制定されました。

※しまくとぅば・・・琉球列島は広い海にまたがっているため、各地域ごとに言語があり、同じ沖縄でも、他地域の言語は全く分からないことが多くあります。

そんな多様性に富んだ琉球列島の言語を総称して「しまくとぅば」と呼んでいます。

 

しかし、平成21年、ユネスコより、宮古語、八重山語、沖縄語など、沖縄県内の5言語を含む、8言語が消滅の危機に瀕しているということが発表されました。

沖縄の長い歴史の中で、地域の人々の生活やそこで育まれた文化を支えてきたしまくとぅばが、若い人たちに継承されず、消滅の危機に瀕しているといわれています。

 

そこで、沖縄県では、「しまくとぅば普及推進計画」及び「しまくとぅば普及推進行動計画(前期中期後期)」を策定し、一層のしまくとぅば普及継承に取り組んできました。

令和3年度しまくとぅば県民意識調査では、しまくとぅばに親しみを持っていると答えたのは、宮古地区の37.8%(県平均34%)が最も高く、また、しまくとぅばの使用頻度(しまくとぅばを挨拶程度以上に使う割合)においても、宮古地区の38.7%(県平均28.6%)が最も高いなど、宮古地区では、若干、他の地区よりもしまくとぅばが身近な存在であることが分かりましたが、過去の調査と比べてみると、しまくとぅば使用頻度(宮古地区)は平成25年が60.5%、令和元年度59.9%、令和2年度43.1%と年々減少してしまっています。(※)

※今回の調査では「しまくとぅば」の使用頻度が過去調査と比べると大きく低下しているが、調査手法の違いによる影響していると見られ、同一手法だけで比較すると微減。(令和3年度しまくとぅば県民意識調査報告書より引用)

また、近年のコロナ渦において、人と会う機会が減り、しまくとぅばを話す機会も失われてしまっていることが分かりました。

しまくとぅばを話せる方が年々減少してしまう中で、しまくとぅばをどのように普及継承していったらよいのでしょうか?

 

そこで今回は、しまくとぅばの普及継承について、名桜大学准教授の半嶺まどか様にお話を伺いました。

 

Q 半嶺様の自己紹介をお願いします!

専門分野は、応用言語学や言語再活性化です。言語再活性化は、比較的新しい分野で、地域の言語がなくなってしまっているのを生活の中でどのように取り入れていくかという分野です。

 

Q しまくとぅばプロジェクトにご参加されているとの事ですが、しまくとぅばプロジェクトの目的や活動内容などを教えて頂けますか?

このプロジェクトは、沖縄県立博物館・美術館の指定管理組織が実施するしまくとぅば普及継承事業を支えるボランティアとして2008年4月に活動を開始しました。その後、指定管理組織であった美ら島財団のしまくとぅば普及継承事業が打ち切られたのを機に、会員組織としての「しまくとぅばプロジェクト」を立ち上げ、2019年度からは独自の活動としてしまくとぅばの普及、継承、啓蒙活動を実施しています。

しまくとぅばに興味があるすべての人が対象で、年齢などは関係ありません。シマそれぞれの言語を学ぶ機会を地域のみなさまに提供しようということで、シンポジウム・鼎談(ていだん:三人が向かい合って話をすること)・講座・ワークショップなどを開催しています。

 

Q しまくとぅばに関するエピソードなどがあれば教えて下さい!

スコットランドの大学院で、ゲール語を学んでいた時、まわりの友人たちに出身地を聞かれ、沖縄であることを伝えると、さらに、沖縄の言語について聞かれました。私の父は八重山出身で、母は沖縄本島の出身です。子どもの頃、2人のおばあの言葉が違うと感じていたのを、改めて思い出し、このような沖縄の言語の多様性に興味を持ち、スマムニ(八重山語)を学び始めました。

八重山の祖母とスマムニで話すようになり、スマムニ大会にも出場することになり、発表練習を祖母に聞いてもらっていたのですが、最初は「スマムニなんか話せるようにならなくてもいい」と言っていた祖母も、次第に私のスマムニを聞き、泣いて喜んでくれたのがとても印象的でした。

 

Q 2009年に消滅危機言語としてユネスコに認定された8つの言語・方言の内、5つが沖縄県の言語であったように、今、しまくとぅばは危機にあるわけですが、どうして沖縄県の言語は、他の地域よりも消滅の危機に瀕することになってしまったのでしょうか?

明治維新の後、標準語を普及させるため、沖縄の小学校ではしまくとぅばを禁止し、標準語励行と呼ばれる標準語教育が行われるようになっていきました。標準語励行運動が盛んになり、次第に「琉球の言葉は古い」、「田舎っぽい」、「標準語の方が正しい言葉」というイメージが広がっていったのではないかと思います。

 

Q 沖縄県では、平成25年度に「しまくとぅば普及推進計画」を策定し、約10年間しまくとぅばの普及に取り組んでいますが、最近のしまくとぅば普及に関して、以前と比べ、変化を感じますか?また、それはどのような変化でしょうか?

しまくとぅばに対して、かっこいい、面白い、楽しいなど、良いイメージに変わってきたり、バスの車内放送やファミマのATMアナウンスにしまくとぅばが取り入れられたり、沖縄のあちらこちらでしまくとぅばに親しむ機会が増えてきたと思います。

 

Q しまくとぅばを普及継承させていくことの意義とは何でしょうか?

言葉にはすごい力があると思います。私が継承言語として受け継ぐ努力をしているスマムニ、これがなくなったら私につながる何かもなくなってしまう気がしています。

また、しまくとぅば普及継承については、ただ昔を引き継いでいくだけではなく、「面白い、かっこいい、話せて楽しい」など、しまくとぅばの新しい価値観をつくり、みんなで共有していきたいです。

 


▲名桜大学准教授の半嶺まどか様

お忙しい中、取材にご対応くださった半嶺様、ありがとうございました!

ルーツを改めて感じながら、しまくぅばを話せる嬉しさ。

新しい価値観をプラスしながら、みんなで学ぶ楽しさ。

半嶺様の「何よりしまくとぅばを学ぶことは楽しい」というお話がとても印象的でした。

私たちのアイデンティティのよりどころ「しまくとぅば」も、千年先まで、つまり未来へ残したいものです。

 

しまくとぅばナビ宮古島市文化協会HP等のサイトでは、しまくとぅばを楽しく学ぶことができます。ぜひ、ご覧ください。