千年先の、未来へ。

エコアイランド宮古島公式サイト

follow us
Instagram facebook

Message from ecoislandエコアイランド通信

2022.08.17
特集記事

「保全と利用」国定公園指定に向けて

先月、宮古島沿岸域が国定公園候補地として選定されました。

国定公園とは、国立公園に準じる景勝地として自然公園法に基づき、環境大臣が認定し、各都道府県が管理する公園です。

県内では、読谷村の残波岬から国頭村の西海岸一帯及び本部半島にまたがる「沖縄海岸国定公園」、ひめゆりの塔など県南部海岸地帯の戦争史跡「沖縄戦跡国定公園」が国定公園に指定されています。

国立(国定)公園の目的は、「次の世代も、私たちと同じ感動を味わい楽しむことができるように、すぐれた自然を守り、後世に伝えていく」ことです。

指定されると、自然環境の保全と利用について、国立公園では国が、国定公園では都道府県が様々な保護や管理を行っていきます。

国立公園(国定公園)指定のメリットとしては、自然風景・環境が保護されるということが1番ですが、その他にも、利用者増加に伴う経済波及効果、地域イメージ向上などがあげられています。(※平成12年度環境省調査より)

 

宮古島沿岸域が国定公園に認定されると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

また、私たちの生活に何か制限がかかることはあるのでしょうか?

早速、宮古島市教育委員会生涯学習振興課の梶原課長にお話しを伺いました。

 

Q1. 環境省から国定公園の新規指定候補地として宮古周辺海域全体が選定されたことについて、最初にどう思われましたか?

八重干瀬及び周辺地域を国定公園にしたいと考えていましたが、それが宮古島沿岸全域に拡充した形で候補地に選定され、大変うれしく思っています。

 

Q2. 国定公園(又は国立公園)をめざしたのは、主にどのような理由からでしょうか?

きっかけは、市長からの「八重干瀬を世界自然遺産にできないか検討せよ」との指示でした。「八重干瀬は世界に誇れる素晴らしいサンゴ礁であり、たとえ世界自然遺産への登録が実現できなくても、それを目指す過程でサンゴ礁保全への理解が深まるなど、得るものはたくさんある」とのこと。実際、世界自然遺産への登録には、世界唯一の存在であること、他に類するものがないことという基準があり、これをクリアできる見込みはとても低かったため、国立公園または国定公園の指定を目指すこととしました。理由は、国立公園等の設置目的が自然の保護と利用の両方の推進(自然公園法第1条)であるためで、まさしく実現したい姿そのものでした。

 

Q3. 国定公園指定(又は国立公園)を目指したのは「持続的な観光振興を図っていくため」とのことですが、これは宮古島観光協会の候補DMOと方向性が同じに思われますが、今後、具体的に足並みをそろえて動いていける取り組みなどはございますか?

まだ具体的に何かあるわけではありませんが、マリンレジャーの際のルールづくりや、沿岸保全の取り組みなど、お互いに意見交換をしながら進めていきたいと思っています。

 

Q4. 去年の発表では、「八重干瀬を中心とした周辺地域」の指定を目指すということでしたが、今回、宮古周辺海域全体が対象となった理由はどのようなことでしょうか?また、今年6月から自然環境調査に着手とのことですが、どのような環境調査でしょうか?

宮古島市から環境省や県に相談したのは、去年の6月ですが、ちょうど国の生物多様性国家戦略の一環として、30by30(サーティ・バイ・サーティ)という2030年までに陸と海の30%を保護区にする方針と相まって、宮古周辺海域全体に拡大しての候補指定になったのではないかと思います。

自然環境調査については、海と陸の両方で調査を行っていく予定です。

<海>
・サンゴ分布調査(どのサンゴがどこにどれだけ生息しているか?)
・海洋生物分布調査(どの生物がどこにどれだけ生息しているか?)
<陸(沿岸部)>
・植物分布調査(どの植物がどこにどれだけ生育しているか?)
・希少生物調査(人的乱獲の情報などを記録)

 

Q5. 国が30by30をより早く達成できるために、また、宮古島が少しでも早く国定公園に指定されるために、考えられていることなどがあれば、お聞かせください。

宮古の「美ら海連絡協議会」が加盟団体間で締結している協定(※)は、漁業とダイビング等の共存、観光振興とサンゴ礁保全の両立を目指すもので、おそらく国内でも高水準の自主ルールです。同様の取り組みを広く浸透させることで、しっかりとサンゴなどの自然環境を守る体制確立したいと思います。そのためにどんな取り組みが可能か、これから考えていかなくてはなりませんが。

また、自然環境調査を充実させて、国定公園にふさわしい自然環境があることを客観的に示し、国定公園指定に向けて、加速させていきたいと考えています。

※3漁協(宮古島漁業協同組合・伊良部漁業協同組合・池間漁業協同組合)と観光事業5団体(宮古島ダイビング事業組合、宮古島マリンリゾート協同組合、宮古島ダイビング協会、池間八重干瀬会、伊良部下地島マリンレジャー組合)が結んでいる「相互理解と協力等により水産業及び海を利・活用する観光事業の振興など地域の発展並びに漁業経営の安定などに寄与するため」に締結されている宮古地域における海面の調和的利用に関する協定。「美ら海協力金」を海洋環境保全などに活用していくことや水中ブイ使用などについて定めています。

 

Q6. 国定公園に指定されると、さまざまな規制がかかってくると思うのですが、宮古島において、指定されたことによるメリット、デメリットはどのようなところにあるとお考えでしょうか?

まず、漁業については、国の指定に関する要領では「漁業の支障とならないように地元漁業関係者の意見を徴する」と明記されているため、市としても事前に漁業者の意見をしっかりとお伺いし、支障をきたさないよう、十分に配慮していくので、安心してほしいです。また、漁業へのメリットについては、沿岸陸域の乱開発抑制が図られるため、漁場保全に貢献するものと期待しています。

また、ダイビング・マリンレジャー関連については、自主ルールですべての事業者がしっかりと規制を守れるなら、行政として、規制ルールをつくる必要はないと考えていますが、サンゴを踏んだり、水中ブイを使用しないなど、自主ルールを守らない事業者が一部でもいるなら、規制ルールを作っていくことになります。貴重な観光資源を守りながら、持続的に観光振興を図っていくための取り組みでもあるので、しっかりとルールを守っている事業者にとっては歓迎されることだと思います。

 

この島の貴重な自然をいつまでも守っていくため、島と人が共存していくため、今後、この国定公園指定は重要なキーワードになっていきそうです。お話しを伺っている間、梶原課長の島への熱い想いをビシビシと感じたとても有意義な時間でした!

 

 

また、美ら海連絡協議会の加盟団体のひとつ、池間八重干瀬会メンバーの原さんは、「国定公園化は大歓迎です。より多くの人に八重干瀬を知ってもらいたいです。今年も台風が来ておらず、多くのサンゴが白化し始めている中、八重干瀬のルールを周知した上で、それを守り、保護活動も活発化すればと思います。」とコメントをいただきました。

 

国定公園は、自然環境を守りながら、自然についての知識を深めたり、健康増進やレクリエーションのために自然とふれあうところでもあります。

「保全」と「利用」!!

この豊かで美しい宮古島の自然環境を千年先の未来へつなぐために・・・。

 

お忙しい中、取材にご対応くださった梶原課長、原様ありがとうございました!

 

▲取材にご対応頂いた生涯学習振興課の梶原健次課長