Message from ecoislandエコアイランド通信
アートな島「豊島」で楽しめる体験型観光ツアー~アーキペラゴの取組み~
皆さんは、瀬戸内海の島々にどのようなイメージがありますか?
いわゆる「多島海」といわれるたくさんの島が点在する瀬戸内海ですが、島ごとの文化や特色は驚くほど違います。
その島の一つである「豊島」は、「アートな島」として知られています。
瀬戸内国際芸術祭が開催されることでも有名で、現在は直島に次ぐ2番目に来場者数が多い島となっています!
NPO法人アーキペラゴは、豊島の歴史や自然をテーマにした体験型観光ツアーを展開しており、「ツアー全体にSDGsの観点が活かされている」と高く評価されています。
そしてこの度、地域の魅力を発信する優れた体験型観光を顕彰する第1回Attractive Japan大賞SDGs賞を受賞されました!
「エコアイランド宮古島」を掲げている宮古島としては、エコな体験観光を知らずにはいられない!ということで、アーキペラゴの三井さんと串田さんに取材させて頂きました!
数ある島の中で豊島でこのような事業を行った訳
きっかけは、アーキペラゴのメンバーがシブヤ大学のメンバーとともに、島のコンテンツを探しにいくゼミ「シブヤ大学ツーリズム」開催したときのこと。
瀬戸内海にはいろんな島がありますが、面白い島がたくさんあります。
このゼミでは瀬戸内のいろんな島を訪ねて、みんなで感想を言い合いました。
そして、たくさんの島を見たなかでも印象的だったのがこの「豊島」だったとか。。。
産業廃棄物の問題を学んでいくうちに、自分たちも地元で学ぶ必要があるのではないか?と思い、定期的に豊島に通い始めたそうです。
アーキペラゴの展開する体験型ツアーとは
▲実際に埋められていた産廃の一部。シュレッダーダストや廃タイヤなどが見られます。
内容は様々。最近では、「ファムトリップ」を開催されました。
フランス人向けツアー会社
参加された方々は、豊島の「アート」なイメージが強く、産廃の歴史を知ったときには驚きが大きかったそうです。
ツアー後には、島内の綺麗な景色と歴史のコントラストがはっきりと浮き出て、「豊島のよさを余計に知った!」との声もあったり、地元の方との交流ができてよかった、など前向きな意見が多く寄せられました。
豊島は人口800人ほどの島にもかかわらず、瀬戸内国際芸術祭の際は豊島美術館に1日1000人以上ものひとが訪れます。
豊島は湧水が豊富で稲作も盛んであったし、たくさんの魚が獲れる漁港もあったことから「豊島」と名付けられるほどの豊かな島!
そんな島に「どんなことがおこったのか?」ということがツアーを通して学べるのが大きな魅力です。
そんなツアーが「SDGsの観点が活かされている」と評価されているわけですが、アーキペラゴでは、初めからSDGsを意識して活動を行ってきたわけでなく
始めたころは“SDGs”という言葉もなく、海ごみの調査などエコに関わることを各島々でずっと行ってきました。
それがたまたまSDGsと結びついた、という感覚なんだそうです。
豊島のブランディングとこれまでの歴史
今では豊島、というと「食とアート」、最近ではさらに「環境保全」や「エコ」と、よいイメージがありますが、以前までは産業廃棄物の問題がメディアに取り上げられたことによって、「ゴミの島」という負のイメージが大きかったようです。
豊島の中学生が修学旅行でプロ野球観戦に行ったときのことです。
野球を見に来ていた関西のご婦人方が豊島の中学生たちに聞こえるように「豊島はゴミの島だよ」と言ってしまったのです。
それを聞いた中学生たちが島に帰って大人に報告。
知らない地でそのように言われていることに大人は愕然とし
「子どもにそんな悲しい思いをさせてしまった」ことに対してもショックが大きかったそうです。
逆にこれがエネルギーにもなり、豊島の大人たちが産業問題に関して一丸になって裁判に向かっていった歴史があります。
ほかにも例えば、お隣の直島はたくさんの工場がある島。
大手の企業が参入したことによって直島の経済は発達し、変わってきました。
実は、直島の前に豊島にも同じように申し出があったそうですが、豊島はそれをお断りしたそうです。
そうやって豊島ならではの良さである、自然の豊かさが守られてきたのです。
とはいえ、豊かな自然が残っているこの島を守るためにも過去30年のあいだにおこったゴミ問題や、
直島も含めて瀬戸内海の島々では、近代化の中でなくなった要素と新しい要素がたくさんあること、
これらをこれからの若い世代の人にも語り継いでいくこと、これも大切な島の役目である、と考えているそうです。
▲1000年以上も水が途絶えたことのない場所(!)。昔から島の人の交流の場。
保育所へ芸術士の派遣事業
アーキペラゴの様々な取組の中でも「芸術士のいる保育所」という印象的なものがあります。
こちらは、瀬戸内国際芸術祭が決まってからは特に、アートにおける地域の誇り、新しいビジネスをつくっていこうという狙いのもとに始まりました。
さらにアートをもう少し現場の仕事にしたい、という想いもあり、
北イタリアのレッジョ・エミリア市の保育教育を参考に、アーティストが保育の現場に常駐するモデルを取り入れました。
アーティストという第三者が保育の現場にはいると新しい風が吹くのでは、と期待が寄せられています。
アーキペラゴの今後の課題や目標や、観光で来られた方に伝えていきたいこと
現在は計画段階中だそうですが、島に訪ねてくれる海外の方々はもちろん、地元の方々にももっと参加してもらいたいと思っているそうです。
「瀬戸内国際芸術祭が始まったころは、地元の人の参加はなかなかありませんでしたが、回を重ねるごとに少しずつ参加してくれるようになりました。これからはさらにその数を増やしていきたい。
観光で来られた方にはもっと島の事を知り、地元の人といろんな話をしてほしいと思っています。
というのも、これまでは名所巡って写真撮って・・・が主流で、言い方は悪いが芸術祭も「流行りだから来てみた」という人が多い印象でした。
でも島をよく知ることで、きっともっと違った見方ができると思うんです。」
コロナ禍の現在は、高齢者が多いこともあり、不安の声があるうちは中々ツアーができない状況ではありますが、今後も取り組みを続けていく、と意気込みを語って頂きました。
これからの豊島がどのようになっていくか、私も楽しみです!