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宮古島の一次産業を支える新しい挑戦 ― 令和7年度「宮古地域農林水産業振興発表会」レポート
宮古島の農林水産業では、島特有の土壌や台風などの自然条件など、現場が抱える課題に日々向き合いながら、地域の生産基盤の整備や作業の省力化支援、地域資源の循環活用など、持続可能な一次産業を目指した多角的な取り組みが進められています。
そこで、日々の取り組みをあらためて振り返り、先日開催された「宮古地域農林水産業振興発表会」の概要とともにご紹介します。
この発表会を主催する「宮古地域農林水産業推進会議」は、宮古地域の農林水産業の振興と発展を目的に、生産者や関係団体が連携し、研究発表や情報交換を行う場として活動しています。
さとうきび、マンゴー、畜産、水産など、多様な産業の今を知り、島全体で課題解決や新たな可能性を探る貴重な場となっています。
今年度の発表会では、当地域が取り組む5つの主要施策について、現場の成果や今後の方向性が共有されました。
1. 泡盛蒸留粕を活用した土壌還元消毒の効果(沖縄県農業研究センター宮古島支所)
宮古島では連作によって土壌中の病原菌が蓄積し、枯死株や収量低下が起こりやすい状況が続いてきました。これまで主流だった化学農薬による土壌処理は一定の効果がある一方、環境負荷が課題となっています。
農林水産省の「みどりの食料システム戦略」では、化学農薬を2050年までに50%削減する目標が掲げられており、地域資源を生かした新しい土づくりが注目を集めています。
その一つが「泡盛蒸留粕」を活用した土壌還元消毒です!
蒸留粕をすき込み、土壌を密閉することで微生物の分解が進み、還元状態が生まれ、フザリウム菌などの病原菌を大きく抑制します。
実証結果では、病原菌密度が約95%減少!!
ゴーヤーのつる割病発生率は(前年度)60%→6%、カボチャの立枯病発生率は(前年度)40%→1.4%へと改善しました。
また、全窒素濃度が0.6%であることから、堆肥と同等の肥料としての効果も期待できるそうです。
「みどりの食料システム戦略」では、化学農薬と同じく化学肥料も30%の削減目標が掲げられているため、「泡盛蒸留粕」の活用は環境に配慮した新しい土づくりとして評価が高まっています。
2. さとうきび生産体制の強化(宮古農林水産振興センター農業改良普及課)
宮古島の基幹作物であるさとうきびは、地域農業を支える重要な産業です。
その生産体制の強化にあたり、「地域農業振興総合指導事業」が行われています。
1.地力増進
・土づくりの目的や効果を学ぶ講習会の開催
・有機質肥料購入補助(宮古島市農政課)
・さとうきび生産性向上緊急支援事業(宮古地区さとうきび糖業振興会)
・堆肥散布機の導入と、実演会の企画支援
2. 受委託の推進
・作業の効率化やスマート化の支援
・補助事業の活用促進
・各種システムの講習会・研修の実施
地域が一体となって生産性向上と経営安定化を図る取り組みが進んでいます。
3.スマート農業の支援(宮古農林水産振興センター農業改良普及課)
宮古島市では、スマート農業技術を実際の展示ほで運用し、生産者が機器に触れ、具体的な活用イメージを持てるよう環境を整えています。
令和5・6年度(メロン栽培)
・センサーとカメラで温湿度等を常時スマホで確認できるようモニタリング実験
・温度制御による側窓の自動開閉装置により、遠隔での操作を実証
令和6年度(マンゴー栽培)
・温度・雨量などのデータをリアルタイムで取得し、谷間の開閉を遠隔で自動制御できるシステムを導入




当日、会議室にはスマート農業で実際に使用されている機器が展示されていました。
4.農林水産整備課農地農村整備班の取り組み(宮古農林水産振興センター農林水産整備課農地農村整備班)
土地改良法に基づき、農地整備事業、水利施設整備事業、不発弾等探査事前調査事業、災害復旧事業様々な農地基盤整備事業を実施しています。
これらの事業は、地域の農業経営の維持・強化に貢献することを目的としています。
近年は、新たな工法としてストーンクラッシャーの導入が始まりました。
従来の人力による石拾いは作業量が膨大で、人手不足の中では負担が大きいものでした。
ストーンクラッシャーは、サンゴ石灰岩を20cmごとの深度で破砕し、60cmの耕土深化を図る技術です。
通気性や保水性の改善につながり、長期的な農地基盤の強化が期待されています。
導入コストの課題はありますが、「10年分の石礫除去が不要になるなら費用を十分に償える」との見方もあり、効果検証を行いながら今後の展開を探る方針とのことです!
5.農家自ら実践する素牛産地形成における取組(宮古農林水産振興センター家畜保健衛生課)
宮古地域では、肉用牛の基盤強化に向けて 素牛(もとうし)産地形成 が進められています。
地域の生産者自身が主体となり、宮古地域を安定した素牛の産地として確立・拡大していくことで、生産量の増加や子牛の品質向上、そして持続的に繁殖を続けられる生産基盤の維持や畜産農家の経営安定を目標に、関係機関が一体となって支援にあたっています。
取組内容
・県有種雄牛の遺伝資源の活用方法に関する説明会と個別巡回
・「宮古地域サポートチーム」の設立
− 出荷成績・繁殖成績を見える化する個別成績表を作成
・「宮古地区肉用牛繁殖経営再興協議会」の設立
− 子牛価格の変動や飼料高騰といった外部環境に左右されない産地形成を目指す
今後も農家の声に耳を傾けながら、より実践的な支援策の検討が続けられるそうです。
「令和7年度 宮古地域農林水産業振興発表会」は、島の一次産業が抱える課題と、その先に広がる希望を共有する場となりました。
島の農林水産業は、自然環境の厳しさと向き合いながらも、地域の知恵や技術、そして生産者のみなさんのたゆまぬ努力によって支えられています。
これからも、生産者と関係機関が手を取り合って、地域全体で知恵を出し合い、技術を学びあいながら、島の恵みを未来につなぐ取り組みが広がっていくことを期待しています!