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Message from ecoislandエコアイランド通信

2021.07.08
お知らせ

障がい者に働く場を!誰一人取り残さない世界へ!!

宮古島で美味しいと評判の「アダナスのパン」。
市役所などでの移動販売をはじめ、地元スーパーでは店頭に並んでいますが、
どれも美味しいパンばかりで、夕方にはほとんど売り切れてしまいます。

そんなアダナスのパン、実は就労継続支援B型事業所「パン工房アダナス」で障がいのある方々が作っています。
就労継続支援B型事業所というのは、一人ひとりの障害や健康状態に合った仕事を行うことができ、
雇用契約は結べませんが、短時間就労など自分のペースを尊重した働き方が可能な事業所です。

パン工房アダナスは2004年、 障がい者の働く場を確保することを目的に開所し、
現在約28名の利用者さんが、1日約1000個のパンを製造しています。

 

障害の有無に関わらず、誰もが平等に地域で共に暮らす当たり前の社会へ。

 

ノーマライゼーション(障害をもつ者ともたない者とが平等に生活する社会を実現させる考え方)
が叫ばれる今日ですが、離島の離島である宮古島では、ほんの20年前ぐらいまで、
障がい者の居場所はほとんどなく、学校を卒業した障がい者は在宅を余儀なくされていました。

そこで今回は、そんな宮古島において、以前より障がい者の雇用の場を作ることに奮闘し、
2019年度総合事務局ディスカバー農山漁村の宝にも選定されたみやこ福祉会の伊志嶺理事長にお話を伺ってきました。

 

 

●障がい者雇用に取り組み始めたきっかけは?

実は私の5歳上の姉には知的障害があります。
でもだからと言って最初から障がい者に理解があったんじゃなくて。
むしろ姉の障害を理由に、鉛筆で手を刺されるなど、学校でいじめに遭ったりもしていましたので、福祉施設などに対しては、嫌悪感を持っていて、あまり足を踏み入れることはありませんでしたね。

でも22歳で母親を亡くしたのをきっかけに、姉の入所施設のイベントなどに参加するようになり、実際に参加してみると、施設の利用者やその家族が、一生懸命に、そしてたくましく生きる姿に感銘を受けました。

しかし一方で、施設利用者を下に見る職員の態度が許せないことがあり、父親に相談しましたが、
「障害のある娘が世話になっているので何も言えない」とのこと。
親の会の会長にも思いをぶつけましたが、「親の会からは言えない」と言われてしまいました。

それならと「兄弟姉妹の会」を結成(1986年)し、会長になると、施設利用者の処遇改善について、時には口論になりながらも、毎月施設職員と議論を重ねていきました。

「障がい者が幸せに生きるためには、何が必要なのか」
毎日真剣に考えていました。

当時の宮古には、障がい者が働くなんて発想すら誰にもなく、日中に通える福祉施設もない。
入所施設も常にいっぱいで、入ることはできない。
学校を卒業したほとんどの障がい者は、居場所のないまま、在宅を強いられていたんです。
楽しく友人としゃべる機会もなく、外の世界とつながることもなくです。

「なんとかこの人たちの居場所をつくりたい」
障がい者の雇用の場というよりは、日中の活動の場を通じて、障がい者たちの居場所をつくりたいと決心しました。

 

●社会福祉法人を立ち上げたきっかけは?

親にはだいぶ反対されましたが、私は28歳のとき、サラリーマンをやめ、農地を借り、
そして在宅障がい者5名を受け入れて、農業をはじめたんです。

そしたら次から次へと働きたい在宅者がやってくるようになって、それならと果物集荷場を利用し、
無認可の福祉作業所を宮古で初めて立ち上げました。(1996年)

でも利用者5名からスタートした福祉作業所は、さらに利用者が増え、20名あまりになり、
もう無認可ではいろいろなことが限界で、やっぱり社会福祉法人の設立を目指そうって決めたんです。

そして親の会、兄弟姉妹の会が母体になり、「社会福祉法人みやこ福祉会」を立ち上げ、
みやこ学園をスタートさせました。(2001年)

 

●アダナスのパンを作り始めたきっかけは?

みやこ学園の当時の定員は40名でしたが、すぐにいっぱいになって。
もう満員なのに、それでも毎年「どうにかうちの子も受け入れてもらえないか」って、
我が子の卒業を目前に控えたお母さん方がくるんですよ。
何とか受け入れてあげたいけど、それができない。
だからもっと定員を増やさなくてはと、急遽、みやこ学園の分場「パン工房アダナス」を開所(2004年)し、パン作りを始めたんです。

 

●野菜ランドみやこを作った理由は?

みやこ学園は、一般就労が難しい方のための福祉的就労の場ですが、一般就労への移行をサポートする場でもあるんですよ。
でも障がい者を受け入れてくれる地元企業への就職は狭き門。
いくら私たちがサポートを続けても、受け入れ先がなければ、どうにもならない。

だから、ないなら自分たちで作ろうって作ったのが野菜ランドです。
野菜ランドは一般就労のできる就労継続支援A型事業所で、
利用者は雇用契約を結びながら、最低賃金以上の給与をもらい働くことができます。

 

●その後、トマトランド(現メロンランドみやこ)、レストラン大平山と規模拡大をされていますが?

野菜ランドの利用者さんの月平均給与は約9万円。
これだけしっかりと収益を上げている福祉施設は、全国的に見てもあまりありません。

「福祉だから」といって補助金頼みの経営ではなく、
目指すのは「障がい者が働く本来の業務で収益をあげること」

ただ就労継続支援B型事業所であるパン工房アダナスやみやこ学園は、福祉的就労になるため、工賃は月に2万円前後ほど。
なんとかこちらで働く利用者さんの工賃ももう少しアップできないかと考え、つくったのが、
トマトランド、レストラン大平山で、今は月平均工賃4万円を目標に、みんなで頑張っているところです。

 

●これからの障がい者雇用について、どう考えていますか?

みやこ福祉会では障害を持つ本人が「どこで、誰と、どんな暮らしがしたいのか?」
それに応えていくことが最も大切だと考えています。
野菜づくりでもパン作りでもレストランでも、何でもいいんです。
これらはあくまでツールにすぎません。
大切なのは、障害を持っていても、幸せに暮らしていける地域社会の構築です。
障がい者とその家族が、地域で安心して暮らせる環境の整備が、私たちみやこ福祉会の使命だと思っています。

 

国連は、SDGsの17の目標とそれらを達成するための具体的な169のターゲットの中で、
以下の目標を掲げています。

<目標4-5>
2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
<目標8-5>
2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
<目標10-2>
2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

 

「袋詰めが楽しい。私はカマンベールチーズが好きで、よく食べています。」
こう話すのはパン工房アダナスで働いて17年目という宇座美智枝さん(59歳)
宇座さんは学校卒業後、宮古では在宅しか選択肢がなかったため、家族と離れ、沖縄本島の施設に入所、
その後、パン工房アダナスの開所を知り、それならと、24年ぶりにふるさと宮古島に戻って来たそうです。

 

障がい者であっても、健常者と変わりない生活を当たり前にできる社会へ
「宮古島を、日本一住みやすい島にする!」
伊志嶺理事長の熱く長い挑戦はまだまだ続きます。

 

「誰一人取り残さない」世界の実現のために!!

 

お忙しい中、取材にご対応頂きました皆様、ありがとうございました。