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2020.10.02
お知らせ

「島留学」魅力的で持続可能な学校と地域を-隠岐島前教育魅力化プロジェクト-

日本には、持続可能な島づくりに向けて取り組む島は、他にもたくさんあるようです。そのような島々を繋いでゆけないだろうかと思い、取材を進めています。

今回は、島根県のある離島で行われている島留学という素敵な取り組みをご紹介したいと思います!!

地域づくりのモデルに(島根県海士町):上

日本海の隠岐諸島の一つ、海士(あま)町では、「全国から「島留学」の生徒がやってくる県立隠岐島前(どうぜん)高校」や、「島ぐるみで特産品に育て上げた岩ガキや隠岐牛」など、持続可能な地域づくりのモデルになるような様々な取り組みを行っています。

 

そこで今回は特に、島内外から生徒を引き付けている「島留学」に関する取り組みを探るべく、隠岐島前教育魅力化プロジェクト事務局の増谷さんに取材させていただきました!

 

まずは「島留学」制度として、地域外、海外から生徒を受け入れるためにどのようなことをされたのでしょうか。

この制度を検討する上では、コーディネーターを高校に配置したことを取り上げられることが多いそうですが、実際には当時勤務されていた先生方や通学している生徒、 地域の方々へのアンケートやワークショップ等を通して、様々なかたちで対話を重ねていったそうです。

文部科学省のいう「社会(地域)に開かれた学校」にいち早く取り組んだ事例なのでは、と言われるほど前例がない中で、関わる人たちが一から試行錯誤をされてきました。

少し想像するだけでも、とても根気のいる作業だったように感じますね。

 

そんな隠岐島前高校の教育は「グローカル人材の育成」を掲げており、将来のありたい姿や未来をつくっていく力を養う「夢探究(総合的な探究の時間)」を中心に、公立塾である隠岐國(おきのくに)学習センターとも連携し、教科学習も習熟度別に分けたり、個別最適化に向けた授業づくりをしているそうです。

また、特徴的な取り組みとしては2年生全員が行くシンガポールの海外研修や、ロシアやブータンへ生徒を派遣する「グローバル探究」などがあります。


▲シンガポールの海外研修の様子


▲ブータンでの様子

島というと少し閉鎖的なイメージを持つ人も多いかもしれませんが、全くそんな雰囲気を感じさせない、オープンな教育をされているんですね!

その甲斐もあってか、実際に学校に通っている生徒に対しては、島内で生まれ育った生徒も島外で生まれ育った生徒も、多様な考えや価値観に触れ、お互いに刺激し合ったり切磋琢磨することにより、 様々に成長している実感があるそうです。

もちろん変化や成長は生徒によって様々で、自分の言葉でしっかりと語る表現力となって発露することもあるし、未知なることにも踏み出していく行動力となって発露することもあります。 色んな形を通して、それぞれの生徒たちが3年間で自分自身の「幹」を太くしているような印象があるようです。

開かれた学校だからこそ、視野が広がり、多くの刺激を受けるので成長スピードも早そうですよね!

 

そしてやはり気になるのが、離島・中山間地域では異例ともとれる生徒数の倍増を実現している隠岐島前高校。このような結果が出た大きな要因はなんなのでしょうか。

増谷さんは一番の要因は「地域唯一の高校がなくなると、島そのものが衰退する」ということにいち早く気づき、様々な立場の方が協力して具体的な手立てを講じたことではないか、と言います。

なんとかしなければならないと危機感を持った町長はじめとする役場職員の意志、その意志を実現するために様々な施策を考案し実行していった移住者、よそ者がそこまでがんばるならと一肌脱いだ島民の方々・・・。こういった様々なステークホルダーが同じ思いを共有して同時に動けたことが大きな要因だと考えています。

隠岐島前高校を“守る”という場に、学校関係者だけではない多くの人が関わっていったんですね。

 

そんな隠岐島前高校を始めとした隠岐島前教育魅力化プロジェクトの今後の目標は、引き続き「魅力的で持続可能な地域と学校をつくる」こと。

 

▲夢探究授業の様子


▲隠岐國学習センターでの夢ゼミの様子

魅力的であることも持続可能であることも、社会や時代の変化によって変わるもの。だからこそ、社会や時代が変わってもなお進化し続ける地域と学校をつくることが目標、と。

達成して終わり、という「ゴール」を目指した目標設定ではなく、時代の変化に合わせて常にアップデートして「持続」していくという事を目標としていることにハッとさせられました。

一方で、課題としては10年前と変わらず少子化ではないか思う、と増谷さんは言います。

ここの地域もこの 10年で中学 3 年生の数が半減しているそうで、これに関しては、教育や学校のことだけを考えるのではなく、町や地域全体で課題を捉え、他のセクターとも連携していくことが今後求められるのではないか、という事でした。

ここ宮古島でも、他人事ではありませんよね。

 

最近では、卒業生たちとのコミュニティ構築にも力を入れ始めたとのこと。

島内外にいる卒業生にはどんなニーズがあり、どのような暮らしを求めているかを知ることは、島での暮らしを考えていくことにつながると感じているそうです。その結果、彼らが意志を持って帰って来れるような島づくりに貢献したいというお話でした。

卒業して終わり、ではなく卒業後もつながりを絶やさないこと。見落としがちですが、とても大切なことかもしれませんね!

 

最後に、ここがどのような地域になって欲しいかを尋ねると、「隠岐島前高校や島前地域で学んだ子どもたちが、各々の思い描いている「意志ある未来」に向けて行動し続けてもらいたい、学び続けてもらいたいと願っています。そして大人たちには、そんな子どもたちを(たまに叱咤激励もしながら)応援し続けてもらいたいと思っています。」と、とても愛のあるご返答をいただきました!

取材全体を通して、地域全体が想いを一つにして取り組めていることが、隠岐島前教育魅力化プロジェクトの成功につながっているように感じました。

きっとこの形になるまでは様々な議論や意見のすり合わせが行われ、これからも「持続」していくために、常に進化させていくのだと思います。

そんな進化の過程に、この学校の卒業生が関わっていく・・・そんな循環も今後は期待したいところです。

宮古島に、島留学。考えただけでもワクワク。この島の地域資産を活かした教育はきっと刺激的なものに違いありません。

 

増谷さん、取材のご協力ありがとうございました!