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Message from ecoislandエコアイランド通信

2026.09.08
お知らせ

日本の気候変動対策とは?「緩和」と「適応」という考え方

猛暑、大雨、台風。気候変動の影響は、島の暮らしのなかにも現れています。
気候変動への対策には、「緩和(かんわ)」と「適応(てきおう)」の2つの考え方があります。

緩和は、温室効果ガスの排出量を削減したり、森林などによる吸収を促進したりして、気候変動そのものの進行を抑える取り組みです。
適応は、すでに起きている、または将来予測される気候変動の影響に対して、自然や社会のあり方を調整し、被害を防止・軽減する取り組みです。

原因に手を打つのが緩和、影響を受け止める側を整えるのが適応。国はこの2つを、気候変動対策の車の両輪と位置づけています。今回は、エコアイランド宮古島がこれまで進めてきた取り組みを、このうち「適応」という視点から見てみたいと思います🌏

国の適応計画は、2026年度内に改定されます

気候変動適応法(平成30年12月施行)第8条は、政府がおおむね5年ごとに実施される気候変動影響評価等の結果を踏まえ、必要に応じて気候変動適応計画を見直すと定めています。

令和5年5月30日に一部変更となり、熱中症対策実行計画の基本的事項が定められ、市町村長がクーリングシェルター(指定暑熱避難施設)を指定できる制度などが盛り込まれています。

2026年2月16日に第3次気候変動影響評価報告書が公表され、同6月25日の第10回会議では次期計画の骨子が取りまとめられ、計画の改定は2026年度内に予定されています。

節目の年にあたる今、島の取り組みを「適応」の視点で並べ直してみます。

適応を兼ねた、地下水の保全

宮古島は、そのほとんどが琉球石灰岩に覆われた平坦な島で、高い山がないため河川が発達しにくい地形です。そのため、飲料水のすべてと、かんがい用水のほとんどを地下水に依存しています(第4次宮古島市地下水利用基本計画、令和3年6月)。

降った雨のうち、約40%が地下に浸透し、約50%が蒸発散、約10%が地表を流れて海へ出ます。石灰岩の下には水を通さない島尻層群泥岩の層があり、しみ込んだ水はこの上に貯えられます。

つまり、島の水は「降る雨」と「地下の器」によって成り立っています。気候変動によって少雨や干ばつが強まれば、その影響は水源に直接及びます。水を蓄える仕組みと、水質を守る仕組みを維持することが、そのまま気候変動への備え=適応になります。宮古島の地下水保全が気候変動対策として語られるのは、この理由によります。
市の第4次地下水利用基本計画も、将来の水需給を検討するにあたって「気候変動による降水量等の変化への適応」を考慮すると明記されいます。
緊急時(大渇水期)の水利用の優先順位の明確化や、農業用水(地下ダム貯留水)の相互融通の検討などを気候変動への適応、セーフティネットとしてあげられています。

蓄える側の取り組みが、地下ダムです。 地下ダムは、地下水が流れる帯水層に止水壁(堤体)を築いて水をせき止め、地下に貯留する施設です。地上にダム湖をつくらないため水没する土地がなく、水面からの蒸発も起きません。城辺地区に砂川、福里、皆福の3つの地下ダムがあり、現在は仲原地下ダムが施工中、保良地下ダムが建設予定となっています。

守る側の取り組みが、水質の保全です。 宮古島市は平成21年に地下水保全条例を制定し、水道水源保全地域の指定、地下水採取の許可、水位・水質の常時監視(モニタリング)を行っています。窒素濃度をゴールの指標に据えているのも、この延長線上にあります💧

適応を兼ねた、珊瑚の海の保全

サンゴは、海水温が高い状態が続くと、体内に共生する褐虫藻が失われて白くなります。これが白化現象です。短い期間で水温が下がれば回復しますが、高水温(30℃以上)が長く続くと、サンゴは死んでしまいます。

2024年夏の記録的な高水温では、世界的に大規模な白化が発生しました。2025年夏の琉球列島の海水温は平年並みでしたが、サンゴの回復は難しい状況が続いています(国立環境研究所 気候変動適応情報プラットフォーム)。

海水温そのものを、島の取り組みで下げることはできません。しかし、サンゴにかかるそれ以外の負荷を減らすことが「適応」になるのではないでしょうか。 赤土の流出を防ぐこと、生活排水や農地からの窒素負荷を抑えること。白化を経験したサンゴが回復する力を残せるかどうかは、この部分に左右されます。

適応を兼ねた、資源とエネルギー

宮古島の南西に位置する来間島は、宮古島の電力系統の末端にあたります。

ここで、地域マイクログリッドの実証が行われました。株式会社ネクステムズ、沖縄電力株式会社、株式会社宮古島未来エネルギー、宮古島市で構成するコンソーシアムが、経済産業省資源エネルギー庁の「地域マイクログリッド構築事業」により設備を整備し、2022年1月25日に運用を開始。同年5月25日には、大元の送配電ネットワークである宮古島系統から切り離したうえで、需要家側に設置した太陽光発電と蓄電池、および対象エリア全体の需給調整を行う蓄電池のみで、100%の電力供給を実施しました。一般の配電線を介したこの形での供給は、日本で初めてです。
地域マイクログリッド構築事業とは、災害などによる大規模停電時に既存の送配電網から独立して地域へ電力を供給する、再エネを活用した小規模な自立型エネルギーネットワーク整備を支援する取り組みです

再生可能エネルギーの地産地消は、CO2排出を減らす「緩和」の取り組みです。同時に、台風などで系統からの送電が止まったときに島内で電気を維持できることは、被害を軽減する「適応」にあたります。ひとつの設備が、緩和と適応の両方を担っています。

宮古島市は、この実証成果を発展させ、来間島を含む下地地区と狩俣地区を対象エリアとする脱炭素先行地域事業で、太陽光発電・蓄電池やEV、省エネ機器などを組み合わせた「脱炭素グリッド」の構築を進めています。

暮らしのなかの適応 クーリングシェルター

令和6年4月1日に改正気候変動適応法が全面施行され、市町村長がクーリングシェルター(指定暑熱避難施設)を指定できるようになりました。

宮古島市も、市の公共施設をクーリングシェルターに指定しています。開放されるのは、熱中症警戒アラートの運用期間(4月第4水曜日から10月第4水曜日まで)のうち、熱中症特別警戒アラートが発表された翌日です。利用できるのは指定施設の開館日時、指定された場所に限られ、飲みものは各自で用意します。

指定されている施設は、宮古島市ウェブサイト(健康増進課)で公表されています。

世界の島々と、備えを共有する

2025年6月、国連開発計画(UNDP)が実施する「太平洋島しょ国GXプロジェクト」の訪日研修が宮古島で開催されました。日本政府の支援のもと、太平洋地域の島しょ国におけるエネルギー分野の脱炭素化とエネルギー安全保障の向上を目的とした事業です。

パプアニューギニア、サモア、東ティモール、バヌアツなどの行政関係者が来島し、来間島のマイクログリッドをはじめとする島内の取り組みを視察しました。島しょ地域は、気候変動の影響を受けやすいという共通の課題を抱えています🤝

▷ 訪日研修の詳細はこちら:https://eco-island.jp/news/20250617-2/

地下水も、サンゴも、電気も、「適応」という線で見ると、ひとつの島の備えにつながっています。