受け継がれていく宮古上布の技術と想い
2018.8.10
前回に引き続き、宮古上布についてのお話です。
今回は、伝統工芸士あり宮古上布保持団体員でもある、下地達雄さんのとその技術を引き継いでいるみゆきさんの宮古上布に対する思いやこれからについて、お話を聞かせていただきました。
【伝統工芸士・宮古上布保持団体員の下地達雄さん】
伝統工芸士・宮古上布保持団体員の下地達雄さんはどんな人?
下地達雄さんは、10代の頃から宮古上布の世界に入り、60年以上もずっとこの道で懸命に活動されてきたそうです。
ずっと宮古上布に携わったきたという事で、宮古上布についてとても詳しく、宮古上布の技術をこれから先に残していく為に活動されている方です。
初めてお会いした時は、伝統工芸士さんということで緊張しましたが、お話をさせていただくとニコッと笑顔。とても気さくな方でした。
宮古上布の今抱えている問題、課題はどんな事がありますか?
「今後の担い手の育成です。この仕事は好きだけではやっていけない。努力して技を身につけていけば必ず儲かる訳でもないし、宮古上布一筋でやっていくのは本当に難しい。
だから、私たちも無理にやってくれとお願いできない。」と悩ましい表情で語る下地さん。
課題の解決に向けて取り組まれていることはありますか?
「この宮古織物事業協同組合で研修生を育成しています。私は午前中は自分の工房で、午後はここ織物事業協同組合で宮古上布作りについての技術を教えています。
仕事を別に持ちながら週1日で学んでいる人もいれば、みゆきちゃんのように自分の工房を持ちながら宮古上布に集中して取り組んでいる人もいるのです。
そういった志を持っている職人さんを育てることに力を入れています。」
と先ほどの表情から変わり、明るい表情で下地さんは話します。
【下地さんのインタビューの中で名前が上がった「みゆきさん」がこちら】
みゆきさんは、下地達雄さんへのインタビュー中、下地さんのすぐ側で真剣な眼差しで宮古上布のデザインを描きながら、時々一緒に質問に答えてくださり、
下地達雄さんの質問の返答を、宮古上布のことをより理解できるよう詳しく解説してくださいました。
お二人のご関係はとても信頼厚くいい関係だと感じられました。
よくよく話を聞いてみると、みゆきさんは以前、下地達雄さんの工房で弟子入りしていたそうです。
その頃は下地達雄さんのお母様も工房で職人をしていたそうで、織りを中心に様々なことを学ばれたそうです。
その下地達雄さんとお母様の工房がみゆきさんの理想の工房のかたちだったそうで、それを目指して頑張っているそうです。
下地達雄さんは話します。
「宮古上布は400年以上の歴史がある。大変貴重なものだし、伝統工芸品としても認められている。しかし、人間国宝に認められた人は宮古島にはいない。
なぜなら、宮古上布は昔からそれぞれの工程を分業してやってきたからです。
人間国宝として認められる為には、全ての工程を一貫して出来なければいけないのです。宮古上布を守っていくためには人間国宝として認められる職人を育てることも課題と考えています。
みゆきちゃんが人間国宝になれると私は期待しているよ。」
みゆきさんは宮古上布の一連の作業をできるように日々、励まれているそうです。
今ではみゆきさんはご自分の工房を持っていて、織りや染など様々な作業ができるようになっているそうです。
もう一つの課題
また、お二人が口をそろえて言っていたのが、「糸が今は足りない」ということでした。
昔から宮古上布の糸はお年寄りが作っているのですが、作り手が減っているのです。
糸作り教室など教える場を作ったりしているそうなのですが、なかなか本格的に糸作りをする方は少ないとのこと。
「今は趣味程度でやっている方でも、やっていくうちに本格的に糸作りをしたいと思う方も出てくるかもしれないし、今後に何かしらのかたちで繋がっていけばいいのではないかと私は考えています。」と前向きな考えのみゆきさん。
糸作りの団体「宮古苧麻績み保存会」があり、みなさん糸作りのことを広め、伝え、そして残していこうと励んでいます。
糸作り一つをとっても大変な作業です。
最後に
宮古上布の職人さんたちは皆さん、それぞれ宮古上布に対する熱い思いをお持ちでした。
600年もの年月をかけて受け継がれてきた宮古上布。こんなに長い歴史がある貴重なものを途絶えさせたくないですね。
宮古島に伝わる技術や想いのこもった伝統工芸品、宮古上布を「千年先の、未来へ。」残してゆきたいものです。