エコ×ファッションでSDGsをもっと身近に。「エシカルファッション」の未来。
2020.10.30「エシカル」という言葉を最近、一度は耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか?
エシカルとは、「倫理的な」という意味で特に最近は、エコや環境保全、地域・社会への考慮といったニュアンスで捉えられることが多い概念です。
「エシカルファッション」と呼ばれる環境や社会的に配慮された新しいファッションの形も、エシカル消費の1つです。
ファッションを通して、もっと多くの人にSDGsを身近に感じてもらいたい!ということで、「エシカルファッション」を推進している一般社団法人TSUNAGU代表の小森さんに取材をさせて頂きました!
小森さんは、TSUNAGUのほか、藍染めの下着ブランド「Liv:ra」のオーナーでありデザイナーとして活動されています。
「エシカルファッションは、若い方に受け入れてもらうことが必要なカルチャーである」と考えている小森さん。
しかしながら、エシカルファッションには値段の高さやビジネスの難しさがあり「余裕のある富裕層にしか広がりにくい」という側面があります。
長年エシカルファッション事業をやっていく上で彼女は、本当に届けるべき世代に届いていない、という問題に気付いたそうです。
この問題を解決するには、システムそのものを変えないと思うように広まっていかないと考えた小森さんは、
Liv:raのようなファッションブランドを増やしたい!
もっと20~30代の若い世代にエシカルファッションを届けたい!
という目的、想いからTSUNAGUを設立されました。
また、Liv:raもTSUNAGUも「余分な生産が発生しない受注生産スタイル」が特徴的です。
“必要なモノを必要なだけ生産する”という環境にやさしいスタイルは、結果的に会社的にも小森さん自身にとっても大きく負担が減ったそうです。
なによりも、まずは在庫を持たなくていい、という点が非常に大きなメリットになっています。
多くのファッションやファストファッションの従来のビジネスモデルは、「100万の服を売るなら200万の服の在庫をもたなくてはいけない」と言われていました。
そうなると、在庫の負担が大きく会社にのしかかり、「在庫ロス」などの問題を抱えることとなります。
受注生産が実現できているのは、「Liv:raもTSUNAGUもオリジナル商品を販売しているため、競争していない」という点が大きく関係しています。
受注生産をしたら成功するというわけではないと思いますが、小森さん自身にとってはこのスタイルが「合っている」と感じているそうです。
また、こちらの記事を拝見し、現在3Dのデザインシステムを使ったファッションのプラットフォームを構築されていることを知りました。
先進的なその活動に非常に興味があり、詳しくお聞きしました。
プラットフォームの構築には、CLO3Dを採用しており、CLO3Dを使うと3D上で自由なデザインができるようになります。
小森さんは「大量生産・大量消費ではなく、求められたものしか作らなくていい」と考えています。
受注生産という形をとると、どうしてもデザインはシンプルになってしまいがちですが、将来的にはこのCLO3Dを使用することで3D上でデザインすることが可能になるそうです。
つまり、実物はなくてもオンライン上で本物みたいなものがつくれて、
さらにパターン(型)を一緒にデータとして完成することができるシステムを構築できるようになるのです!
「あらゆる問題の根はひとつだと思います。根っこを見てみると、あらゆる問題はシステム自体を変えないと変わらない。
つまり、新しいシステムに変えていかないと問題そのものが解決しないと思うんです。
新しいプラットフォームをつくることで、ファッションに関わる人が自由になればいい、というビジョンを描いています。」
ローンチはおそらく来年になるそうです!
このようなプラットフォームができることで、ファッションに関わる人がさらに自由に自己表現することができるようになるといいですね。
小森さんにとってエシカルとはどういった意義があるのでしょうか?
「わたし個人にとっては、エシカルは自己実現のツールだと思っています。
いろんな視点で見ることができると思いますが、人が自由に生きるためには必ず人や環境に配慮することは結果的に必要になると考えています。
私にとってエシカルファッションは自分らしく生きるため、楽しくクリエイティブに生きていくためのツールになっています。」
しかし環境にも人にも優しい「エシカルファッション」ですが、日本ではなかなか広まっていないのが現状です。
なぜ欧米では広まっている「エシカル」は、日本では広がらないのでしょうか?
「欧米の価値観は教育的かつ啓蒙的であると思います。
よりよいものを選択する必要がある、という意識の高さを感じる人は多いように思いますが、実際は、そんな人ばかりではないんです。
発信力を持った人が影響を与えているのでそのようなイメージを持つのではないでしょうか。
より多くの人がエシカルを選択ができるようには、「環境問題を改善する」といった意識の高い思想では難しい、と考えています。
なぜなら、日本では特に啓蒙的な要素が受け入れられづらい風潮があるからです。」
サステナビリティやエシカルは、小難しい言葉のように思われがちですが、本来はもっと身近なものであったはず。
実際、伝統的な日本のファッション文化は、特別配慮したわけではないのに環境にいいものばかりです。
小森さん自身も「世界をなんとかしよう」と思って活動しているわけではありません。
草木染など「環境にいいこと」をなんでやっているか?というと、「自分たちのためにやっているから」だそうです。
たしかに、日本でこういったエシカルな価値観を広めようとするなら啓蒙的でないほうがいいかもしれません。
小森さんは、自然と調和したものを「自分のためにとっていいものだから使ってみませんか?」というような提案の仕方が大切だとお話してくださいました。
「環境にいいこと」は結局はすべて自分に返ってきて「自分のためになる」ということを、まずは多くのひとに知ってもらいたいと思いました。
最後に、小森さんの今後の目標についてお聞きしました。
Liv:ra、TSUNAGUともにエシカルファッションを展開してきた小森さんですが、
これまでは、「できるだけ環境のマイナスを減らそう、環境にできるだけ負担をかけないように」という目標を掲げてきたそうです。
それだけでも難しい目標ではありますが、最終的には「モノをつくればつくるほど環境が改善される」といった循環を生むところまでもっていきたいとのこと!
ファッションは私たちにとって身近であり、自己表現をするうえで欠かせないものです。
今回の取材を通して、改めて「自分のためにいいものとは、なんだろう?」と考えるきっかけになりました。
大量生産によって生まれた安い洋服をなんとなく選ぶだけではなく、「どのように作られて、どのように流通しているか」がわかりやすいファッションを選んでいきたいと思いました。
そういった選択が、地球にも人にも優しく、結局は自分が快適に過ごせる近道になるのだと思います。
小森さん、お忙しいところ取材のご協力ありがとうございました!